電話、SMS、メール、書面。督促は手段が多いのに、現場はいつも人手不足になりがちです。しかも相手は感情を持った人です。言い方ひとつで支払いが進むことも、逆に炎上や解約につながることもある。だからこそ督促は、単なる連絡作業ではなく、運用設計の勝負になります。
ここにAIを入れると、督促の仕事は「人が全部やる」から「AIが定型をさばき、人が難所に集中する」に変わります。結果として、回収率だけでなく、現場の疲弊やクレームも減らせます。
要約
コストと疲弊の正体は、督促そのものより「連絡の量と品質を両立する運用」にある
AIは「定型+分岐」に強い。難案件は早く人へ渡す設計が勝ち
KPIは回収率だけでなく、接触率・合意率・実行率・対応時間・クレーム兆候まで見る
督促がつらい理由は、実は支払いよりも運用にある
督促現場が詰まるポイントは、だいたい同じです。
架電してもつながらない
つながっても、本人確認・状況確認・支払方法案内など同じ会話が繰り返し
人によって言い回しや強さがぶれて、品質が安定しない
相手が怒る/泣く/言い訳が長い/支払意思が薄い…などで時間が溶ける
いつ、誰に、何を、どのチャネルで打つかが属人化している
法令や社内ルールを守りつつ、やるべき連絡数も確保しないといけない
つまりボトルネックは、支払いそのものより 「連絡の量と品質を両立する運用」 にあります。
AIが強いのは督促の全部ではなく、定型と分岐
AIが得意なのは、パターンが決まっている部分です。
1)事前連絡とリマインド
支払期限の前後で、短い用件を正確に伝える。ここはAIで十分に回ります。
期日前の案内
期限超過直後の一次連絡
支払方法の案内とリンク誘導
入金確認中のフォロー
口座振替失敗の再案内
2)本人確認と要件整理
本人確認、支払状況、希望日、支払手段、事情の簡単な把握。
この入口をAIが持つだけで、人が対応する案件が軽くなります。
3)分割や猶予の提案は、ルールで範囲を決めればAIでも可能
社内ルールで、例えば以下を決めます。
最短支払日はいつまで許容するか
分割は最大何回までか
初回入金を必須にするか
例外対応は人にエスカレーションする
この枠があれば、AIは安全に合意形成まで進められます。
4)支払意思がない/強い反発/法的対応示唆は人に渡す
AIに任せない領域も明確です。
支払拒否が明確
罵声や脅し、感情の爆発
法的手続き、弁護士、監督官庁などの話題
本人以外が出た、関係性が不明
社内ルール外の減免や大幅な猶予交渉
ここは無理にAIで完結させるより、素早く人に渡す設計が勝ちです。
典型ユースケースは3つ
督促でAI導入がハマりやすい順に並べると、こうです。
A)つながらない問題を解くための大量接触
電話を中心に、SMSやメールと組み合わせて接触回数を増やす。
AIは量を担保し、人はコア案件に集中します。
B)一次受付の自動化
電話がつながった瞬間に、本人確認から支払方法案内までをAIで完結。
難しければ人に転送します。
C)支払い意思はあるが手続きが面倒な層の刈り取り
カード決済リンク、振込先案内、コンビニ払い、口座振替再登録など。
行動の摩擦を削るのがAIの仕事になります。
現場で効く設計は、台本より会話の分岐
督促AIは、きれいな台本よりも 「迷子にならない分岐」 が重要です。
会話設計で最低限決めること
最初の目的は何か
入金予定日の確定/決済リンク送付/担当へ引き継ぎ などどこまでAIが確約してよいか(権限範囲)
分割、猶予、手数料、再請求 など何が出たら即エスカレーションか
強い反発、法的話題、本人不一致、ルール外要望 など次のアクションは何を自動で行うか
SMS送付、支払リンク送付、担当へのチケット作成、再架電予約 など
具体的なオペレーション例
シナリオ1:期限超過翌日の一次連絡
AIが電話で要件説明
本人確認
入金状況の確認
未入金なら支払方法を選択してもらう
その場でSMSに決済リンク送付
支払予定日時を確定
予定日時に再リマインド
ポイント:会話の最後に必ず「次アクション」を確定させること。
予定日が取れない場合は、人に渡します。
シナリオ2:口座振替失敗の再案内
失敗理由の説明は短く
代替手段を提示
再登録リンク or 決済リンクを送る
完了確認の連絡を予約
成果指標は回収率だけだと失敗する
督促AIは、回収率に加えて運用KPIを見ないと改善できません。
接触率:つながった割合、SMS到達率、リンククリック率
合意率:支払予定日が確定した割合
実行率:予定どおり入金された割合
エスカレーション率:人に渡る割合が高すぎないか
平均対応時間:人が対応する時間が減っているか
クレーム兆候:NGワード検知、怒りの増加、拒否の増加
AI導入でまず改善しやすいのは 接触率 と 対応時間。回収率はその後、分岐やタイミングを改善して上げていきます。
リスクと守るべきライン
督促は特に、コンプライアンスと感情のケアが重要です。
実装で守るべきラインを最初に決めておくと事故が減ります。
連絡頻度・時間帯の制御
オプトアウト:連絡停止希望が出たら即反映
言い方の制限:脅しに聞こえる表現、断定的な法的示唆を避ける
本人確認が取れない場合の対応:情報を言い過ぎない
録音・ログ保存・監査:いつ誰に何を伝えたかの証跡を残す
ここを固めるほど、AIは安心して現場投入できます。
導入は小さく始めるのが正解
おすすめはこの順です。
期限前リマインドから開始
期限超過直後の一次連絡を追加
本人確認と支払方法案内を自動化
分割や猶予など、ルール内の交渉を追加
難案件のエスカレーション運用を整備して拡張
最初から全部やろうとすると、例外だらけで止まります。
督促は例外の集合体なので、AIは 定型を太くしていく順番 が勝ちです。
まずはデモで触ってみましょう
督促フローは業態によって最適解が変わります。
必要なら、あなたの業態に合わせて「誰に、いつ、どのチャネルで、何を伝えて、次アクションをどう確定するか」まで、コピペで使える形に落とし込めます。
結論
督促のAI活用は、冷たい自動化ではありません。むしろ、定型連絡をAIが正確にさばくことで、人が本当に向き合うべき相手に時間を使えるようになります。
回収率・現場負荷・クレームを同時に改善したいなら、督促はAIが最も効く領域のひとつです。鍵は、台本ではなく 運用設計と分岐設計 です。


